淘宝、2024年に話題を集めた商品の最終候補20点を発表。ストレス社会やパリオリンピックなどが強い影響。

2024年12月16日、淘宝は毎年恒例となっている「今年話題を集めた商品トップ10」の選考を開始した。この日は淘宝での検索数やSNSでの注目度などに基づいてリストアップされた最終候補20商品が発表された。今後ネットユーザーによる投票とメディアや専門家による審査を経て、1週間後の12月23日に最終的なトップ10が発表される予定だ。

前年からの流れを引き継ぎ、今年の最終候補には経済停滞が続くなかで奮闘する人々の心情が色濃く反映された商品が並んだ。中国では数年前から「嘴替」というネットスラングが流行しているが、これは「気持ちを代弁してくれる人や物」を意味する。心の中に抱える悩みや苛立ちを吐露できないストレス社会のなかで、これらのアイテムは単なる消費財に留まらず、人々の「嘴替」としての役割も担っている。

このようなアイテムを代表するのは「オフィスデスク用アクリルスタンド」だろう。卓上サイズのアクリルスタンドには、可愛いイラスト共にオフィスワーカーが心に秘める思いが自虐的な表現でプリントされている。若者世代のオフィスワーカーは仕事の合間にこのアクリルスタンドに目を向けては、口に出せない思いを飲み込んでいるようだ。

よく似たアイテムに「緑のバナナ」がある。実際の未熟成バナナの観葉植物に「禁止蕉緑（焦ってはいけない）」というプレートが吊るされている。中国語で緑のバナナを表す「蕉緑」は焦燥感を意味する「焦慮」と同じ発音であることに由来するジョークアイテムだ。若者たちの間でこの「緑のバナナ」をオフィスに置くことが一時ブームになった。

オフィスを離れて、帰宅した後にも癒しアイテムは必要だろう。「フレームレス抱き枕」は伸縮性の高い生地に動物などの写真がプリントされている抱き枕だ。通常の抱き枕と違って縫い合わせがなく、生地の裏表いっぱいに写真がプリントされている。そのリアルさと気持ち悪さが相まって、若者たちの間でサプライズを込めたプレゼントとして人気を集めた。

11月に上映された映画『好東西（Her Story）』で主役を務めた宋佳が着用していた「90%荒誕（90%は不条理）」とプリントされたスウェットも最終候補に滑り込んだ。映画の中で宋佳はシングルマザーの役を演じているが、社会の中で様々な不条理を感じているのはオフィスワーカーだけではないことがわかる。

他にもユニークなアイテムとして「一袋のゴミ」がリストに入った。これはゴミ袋に布の切れ端が詰められただけの商品で、多くの人にとっては文字通り「一袋のゴミ」だろう。この商品は淘宝に4元（約85円）で出品されていたが、6000件以上も販売された。興味本位で購入した多くのユーザーは受け取った布の切れ端の写真をアップロードして、「出品者の説明通りだった」と高評価のレビューを寄せた。SNSを通して広まるこうした消費行動は、パフォーマンスアートのようにもなっていて、消費を一種の娯楽として楽しむ若者世代の様子が見て取れる。

直接的な商品ではないが「デジタルクーポン」もリストに入っている。中国のECサイトではセール期間中に各種のクーポンが配布されるが、若者世代のユーザーはクーポンを使うかどうかは分からなくても、クーポンを見つけたらとりあえず取得する傾向にあるという。限られた給与の中で生活する若者世代は節約志向が強く、安く買えるものはできるだけ安く買いたいと思っていることがわかる。

「1級省エネエアコン」もリストアップされているが、これも消費者が価格に敏感なことの現れだといえる。今年の9～12月に省エネ機能を備えた家電に対する最大2000元（約42000円）の補助金政策が実施されたが、ちょうど双11セールの時期と重なり、家電業界は大きな恩恵を受けた。多くの人はこの時期に補助金の効果が最大限に発揮される高価格帯のエアコンや冷蔵庫を買い求めた。

一般庶民が少しでも安く買い物をしようとしているのに対し、富裕層による大胆な消費も注目を集めた。10月末、中国の民間宇宙航空会社である深藍航天（ディープブルー・エアロスペース）のCEOがライブ配信で1枚100万元（約2100万円）の宇宙旅行チケットを販売したところ、わずか数分のうちに完売した。

今年開催されたイベントで忘れてはいけないのはパリオリンピックだろう。中国でも大きな関心を集め、代表選手が身に着けたアイテムは大きく売上を伸ばした。中でも弱冠17歳で五輪を連破した女子高飛込の全紅嬋が履いていた「醜い魚のサンダル」は前月比1396％という驚異的な伸びを見せた。全紅嬋のアイテムは缶バッジがたくさんついた「痛バッグ」や子亀のキーホルダーなども注目を集めた。その他に、女子テニスシングルスで金メダルを獲得した鄭欽文が履いていたテニス用スコートも多くの人が同じモデルを買いに走った。

停滞する国内経済を横目に、中国発の越境ECサービスは活況を呈している。越境ECサービスでは中国国内市場ではなかなか光が当たらなかった商品が突然ヒットするケースも多いようだ。淘宝に出店するショップ『yl nail手工穿戴甲』は、奇抜なデザインの蛍光ネイルチップを販売しているが、海外ユーザーの間で人気に火が付き、海外売上高が前年比で250％以上増加した。

過剰ストレス、節約志向、オリンピック、越境ECなど、今年の最終候補に残った商品は社会的なトレンドやイベントの影響を強く受けている。最終的な「今年話題を集めた商品トップ10」は1週間後に発表される。はたしてこの中からどの商品が残るだろうか。