SHEIN(シーイン)は主にレディースファストファッションを取り扱う中国発の越境ECサービスで、欧米や日本などでZ世代と呼ばれる若い女性の間で絶大な人気を誇る。2008年に創業した南京点唯信息技術有限公司を前身とし、2014年に越境EC事業を正式に開始した。かねてから中国が持つアパレル産業のサプライチェーンを活かすとともに、TikTokのショート動画など時代に沿ったマーケティングを利用することでここ数年の間に急速な成長を遂げてきた。
2022年上半期、SHEINの売上高は160億ドル(約2.4兆円)を超え、前年同期比50%増となった。一見すると順風満帆に見えるSHEINだが、その成長スピードに陰りが生じているのも事実だ。2020年のSHEINの年間成長率は250%に達したが、2021年は60%に減速し、2022年上半期はさらに減速している。これはレディースファッションの単一ブランドだけでは巨大化する事業を支え続けるのが困難なことが大きな原因になっている。
そんな現状を打破するために、SHEINはブランドの多角化を進め、レディースファッションという枠から抜け出そうとしている。現時点でSHEINが展開するサブブランドは10を超える。ティーンエイジャー向けファッションの『ROMWE』、ハイエンドアパレルの『MOTF』、欧米風ファッションの『EMERYROSE』、韓流ファッションの『DAZY』、スポーツアパレルの『Glowmode』、下着の『Luvlette』、コスメの『SHELLAM』、靴の『Cuccoo』、ペット用品の『PETSIN』などのブランドがあり、商品カテゴリーやターゲット層は多様化している。
SHEINの成長が減速しているもう一つの原因として、中国の巨大ネット企業が次々に越境EC事業に参入し、競争が激化していることが挙げられる。2021年、テンセントは越境EC事業を展開する細刻科技公司に投資をした。TikTokの運営元であるバイトダンスは、元役員が創業した越境EC会社の新潮無限科技公司に投資するほか、自社でもレディースファストファッションの越境EC事業を開始している。2021年に開始した『DMONSTUDIO』はわずか4か月余りで事業停止に追い込まれたが、2022年には再び『IfYooou』というサービスを開始した。それ以外にもアリババが『AllyLikes』を、拼多多が『Temu』を開始するなど、巨大ネット企業同士の競争は激化の一途を辿っている。
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